ノー天気な南国オジサン

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help リーダーに追加 RSS 物書きのベースマンから……

<<   作成日時 : 2008/07/01 19:53   >>

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音楽をやっている仲間に陽気なベースマンがいる。年齢は古希に達したかどうかであろう。大柄で、小太り、白いチョビ髭にゴマ塩の坊主頭、いたずらっ子の目がくりっと可愛い。愛嬌のあるアザラシの感じだ。

横須賀はドブイタ通りにある米兵相手のバーの片隅で、ジャズに合わせてベースを弾いたらまさに絵になるほどに雰囲気を持っている。彼は若いころから音楽に親しんだとかで、音楽に関する造詣は深い。音楽ばかりか文章も上手で、以前、作家の青木雨彦氏の元で文章の書き方を勉強したと言っていた。

音楽仲間のイベントでの、パンフレットや関連するキャッチコピーは全て彼の担当となる。そんな仕事をニコニコしながら手際よくおしゃれに仕上げてしまう。
私がエッセイを書くことを知っていて、彼もたまに作品を書くと私に持参してくれる。
最近も
「最新作が出来ましたよ」
と、言ってワープロで打たれた二千字ほどの作品を手渡してくれた。

内容は、世間は広いようで狭いものであるということを自分の体験を例にとって説明していた。即ち、最近入会した女性の仲間が実はベースマンと共通の知人がいたそうだ。当人同士はまったく面識がないが、ひょんな話から鎌倉のガイド夫妻の話になり、そのガイドはベースマンの現役時代、職場の先輩であったという。その新入女性会員の住んでいるマンションの住人とのこと、などが面白おかしく表現されており、世間は広いようで狭いと締めてあった。

私にも同じような経験がある。疎開先から東京へ転校してきたら、その学校に疎開先で教えてくれた先生が教鞭をとっていた。

また、通勤電車が込んでいるのにいつもふんぞり返って足を広げて座っている同年代のサラリーマンがいた。私はわざと座っているそいつの前に立ち、電車の揺れに合わせてしこたまひざを蹴飛ばした。
彼は下から非難めかしの目で私を見るが、私は、オマエがそんなに足を広げているから悪いんだよ、と言う思いで、ぐっと彼をにらみつけると、彼はふんぞり返っていた腰を引いて、足をすぼめ、じっと目を閉じ、寝た振りに変わった。次の朝から私の顔を見ると広げた足を狭めて座りなおす。ある秋の日、子供の運動会で、カミサンが子供の友人の両親を紹介してくれた。旦那の顔を見たらアイツではないか。向こうもビックリしたと思う。電車の中で思い切り向こう脛を蹴られたのだから。お互いに知っているはずなのに、初対面の挨拶を交わしてその場を離れた。

まったく世間は狭いものである。ベースマンの作品を読んでいて色いろなことが頭をよぎった。

以前、人の生きかたについての詩を読んだことがある。誰の詩かは覚えていない。内容が素晴らしかった。人は一度しか生きない、それなら美しく生きよう、美しい花にはたくさん虫が来る。枯れた花や造花には虫は一匹も来ない、美しい花には匂いがある。その匂いに皆が寄ってくる。美しい関係、美しい友情、美しい文章、美しい言葉、一度の人生、美しく生きたい。と、言うよな内容だったと思う。

彼のエッセイを読んでふとこの詩を思い出した。自分はまったくの俗人で、立派に美しくなんて、おこがましいが、詩に感動したことはそこに心の共鳴があったからで、そんな生き方をしたいと思ったのだろう。
後日、彼の作品に私の読後感を書いて返却した。
偶然とは面白いものですね。人はいつどこで誰に会うかも知れず、また、どんな関係が生まれるかも知れず、そうであるならば、いつもきれいに生きてゆきたいものですね。楽しい作品をありがとうございました。

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